池田巌氏と

池田巌氏と_c0049825_2513266.jpg10月、村瀬治兵衛さんのお誘いにより、元木さんと一緒に菊池寛実記念・智美術館へ、『現代の茶陶』-造形の自由と用の見立て-を見に行きました。場所はホテル・オークラのすぐ隣で、虎ノ門からホテルの脇の坂を上がったところ。智美術館大賞の受賞作の展示をじっくり見たあと、村瀬さんによるお呈茶でほっとし、ガラス越しに庭園の緑を眺めました。

池田巌氏と_c0049825_3384821.jpgそこは美術館に併設されたレストラン『Voie Lactee(ボア・ラクテ)』。入館しなくても利用できる食事どころとして穴場スポット発見!暮れ馴染むにつれて、天井が星空になる癒し空間で、今風な見立ての取り合わせを前に、漆作家、池田巌氏の対談を拝聴しました。


池田巌氏と_c0049825_3392557.jpg三代、池田瓢阿先生のお兄様はどんな方だろう?ここ2年、特にお世話になった池田瓢阿、泰輔両先生を思いながら、巌氏の生の声を聞ける機会とあってワクワクしていました。
洗練された設計と受賞作品郡を見るうちに、その斬新な「もの言うモノたち」のシャワーを浴びて、真っ白な大広間のように素の頭で対談を聞くことになりました。それまでは、自分の頭の中の何処かき既存の引き出しに納めようとしていたような気がしますが、その日に感じたものは、全く新しい何処かにしまうことになりそうです。

池田巌氏と_c0049825_340947.jpg対談の様子から推察しますに、池田先生の創造活動は、他人からはよく『自ら茨の道を選ぶ・・・』と表現されるように、自らに妥協を許さないストイックさで、薄氷を往く修道のように感じました。針が落ちる音も聞き逃さない、繊細な神経を思わせます。一方、最近の作品として紹介されたのは、竹を「叩き割って」作ったという花入れ・・・もっとも、花入れにしてしまったのは「使い手」であって、作者自身は「お茶道具」を意識していなかったそうです。緻密に積み上げてきた過去を、惜しげなく破壊する痛いような潔さ・・・それは創造の掟なのでしょうか。自分を問われているようでドキッとします。

池田巌氏と_c0049825_342070.jpg片付ける際に見せていただいた桐箱を見て、その箱が出来上がったオブジェにピタリと誂えたオートクチュールだと解りました。底板についた丸いフェルト貼りの穴。スライド式の中板など、箱を見ただけで入れるべきものが見えて来ます。それを見て、「幸せなお道具たちだな」と思いました。
創造の過程での自身への厳しさと、出来上がった作品そのものと使い手への慈愛に満ちた優しさが、表裏一体、矛盾無く池田巌という人物を語っている気がしました。
もう一度展示を見直して、作品に籠もる作家の宇宙を覗き込み、「ほぅ」とため息をついて会場を後にしました。照明を落とした美術館を出て、瞼がぎゅんと痛くなるのが好き。
池田巌氏と_c0049825_3431635.jpg池田巌氏と_c0049825_3433098.jpg池田巌氏と_c0049825_34469.jpg









池田巌氏と_c0049825_3451841.jpg池田巌氏と_c0049825_3455182.jpg池田巌氏と_c0049825_346499.jpg
by soukou-suzuki | 2006-11-01 03:46 | Hikari NOW!
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