ディレクターズ・カット

昨夜、携帯電話をなくした。個人情報数百件入り。渋谷の街中で落としていたら、誰かに迷惑がかることは必至だ。顔面蒼白で行動を振り返る。
昨日使用したタクシーの社内で、パンツのポケットが浅くてこぼれたのだろう。捜索の結果、携帯電話はタクシー会社の営業所に保管されていることが判明。仕事を遅れてすぐさま取りに行く。大名古屋交通の東京営業所は葛西臨海公園駅にある。行きにくい上に、快速は止まらない。駅前の交番は無人で、備え付けの電話で警察へ連絡しても誰も出ない・・・。途方に暮れる私の隣に、もう1名同じ表情の男性がいる。スーツ姿で、これからの近辺の会社に面接にいくらしい。焦っている。大粒の汗。白昼の駅前で、携帯電話を持たないだけで早速迷子の市民、2名。ということは、携帯の普及で道案内は激減したのかしら。でもこれでいいのかしら・・・交番!
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仕方なく、蒸し風呂状態の公衆電話に入り、定期入れの奥にあったテレホン・カードで、タクシー会社の営業所へ電話し、道順を聞く。温室効果抜群のガラス張りの公衆電話。途中で道が分からなくなったら、電話がないからもう聞き直せない!いつになく慎重に道順を聞き取る。何のことはない一本道だが、先へいくと渡れないらしい。間違わなかったが、徒歩5分は大いなる詐称である。炎天下のシュロ並木の下を、汗だらだらで歩き続ける。パンプスの足が痛い・・・。
ちょっと気分よく飲んだツケ(失敗)の、リカバーに半日もかけて、足も痛いし、おニューの白ブラウスは汗でぐちょり・・・。
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情けな~い。神様は私に「浮かれすぎ、自重せよ」とでもいいたいのか?それにしては気の効かない、だらだらした場面展開。これが小説や映画なら、「このシーンは要らない」とディレクターズ・カットされそうな単調で冴えない映像が続く午前中。
とにかく無事に携帯を引き取り、メモリーカードを抜かれた形跡も、架電した様子もないし、未読メールも未読のまま。無事だったようだ。これで誰かに迷惑をかける心配がなくなってほっとした。

帰りの電車は14分待ち。この間に軽く食事をしておこうと見渡すが、何も気が効く店はない。仕方なくゲームセンター併設のロッテリアへ入る。いまどき珍しいゴージャスな冷房。キンキンに冷えている。5年くらいぶりで、メニューに馴染みがないから何度も言い直す。でも苛立つ様子もなく笑顔でじっと待つスタッフ。少し安堵する。「おや?」カウンターの向こうの笑顔に見覚えがある。
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「鈴木さん!」
と呼ばれて、それが浦安に居た時の知人だったことに気付く。すぐ隣のアパートに住んでいた人。彼女が中国から来て間もない頃だった。唐子の絵のような、ぷっくりした可愛い男の子がいたはず。共通点は少ないけど、笑顔と静かさが自然で、私は彼女が大好きだった。
「きゃ~」再会をひとしきり楽しんで、やっと今回の携帯騒ぎが、彼女との偶然の再会へと繋がっていたことが分かり、意味のある行動を取れた気がした。なので、ディレクターズ・カットは無しにして、葛西の炎天道路も可愛い「道草」も記しておくことにします。
この嬉しい再開劇は早速友人にメールで報告。
by soukou-suzuki | 2006-09-08 01:04 | Hikari NOW!
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