立冬も過ぎ、最低気温が都心でも10度を割るようになってきた。
毎日治療で会うドクターいわく、人間も自然の一部なのだと。だからお陽さまが短い冬場は活動も減らした方がよいのだよ、・・・と。 しかし日本に限らずとも、冬場の方がむしろ行事が立て込んでいて忙しいのではないでしょうか? 十二月と言う月が、普段は走らない偉い人(お坊さま)まで駆け出すと言う『師走』になってから、日本はすでに相当の歳月が経っている。 ところでなぜ、洋の東西問わず、一年はあんな寒い日から始まるのでしょうか?ご存じの方は教えてください。 太陽も月も繰り返し同じ動きをしているのだから、いつをスタートにしても差し支えないような気がしますけれど。 天文学が冬場に進化したとか?確かに北半球なら夜空が澄んで見やすそう。 昔、逆に冬場が暇だったから、あれやこれやと行事を創ったとか?? きっとそう。各国がそれぞれ冬場を楽しく昂揚感を持って過ごせるように創った行事が、輸出入を経てみんな残ってしまった気がする。 行事を飾るお支度もつきもの。クリスマスリースも松飾りも、冬籠もりの始めの手慰みだったはず。外へ出ればまだ材料が拾へて、『うわ~寒いっ!』と言いながら火の近くで手芸に勤しむ。視線は合わさず、手元を見つめながらぺちゃくちゎおしゃべりする。 楽しいから続いたのでしょう。 ああ、つまり冬眠に入る前の『夜更かし』みたいなものかしら。 すると冬眠前の『晩酌』が忘年会や納会? はて、その後の冬眠はどこに行っちゃったの~? 人間は冬眠しないって?ごもっとも、でも冬眠まで行かなくても、『冬籠もり』さえ最近は死後になりつつある。 自然に逆らい冬に籠もらなくなったから、北窓を塞がなくなった代わりに、冬の余所行きを誂えたり、車はタイヤを履きかえたり余計に手間暇がかかる。 今じゃ年末は、日常の繁忙を遥かに超えた特別行事の目白押し。クリスマスはかつてオプションメニューだったが、今は行事を超えて、全仕事人の書き入れ時への共通課題。最近さらに天皇誕生日とジョイントしての一大消費加速装置に発展。 後一枚を残すのみとなった古暦(カレンダー)には、『これでもか!』と言うくらい升目ごとに予定が・・・。 それを一億の国民が障害物競争のごとく一斉に駆け抜ける。少し前まではその障害物競争に脱落者なしだったんだから日本人は律儀なだけじゃなく体力的にも凄い。 私はすでに『大掃除』『お歳暮』『クリスマス・カード』のハードルは倒しっぱなしにして飛ばないことにしているけれど、『年賀状』『美容室』『忘年会』をまたぐだけで十分息切れしてます。 世間全体が矢の如く走る。暦にあわせて一斉にジャンプなど織り交ぜながら・・・。 ようやくゴールかと思った『除夜の鐘』は、また次なる十二ヵ月のマラソンのスタートでもある。ファイナルラップの除夜の鐘。余韻に聞き入れば携帯メールが呻き出す。御来光を瞼に焼き付けて部屋に戻ると年賀状。マジシャンの予告カードのように、葉書にはさっき見た御来光の絵が。その絵の横には、自分もそうしたように、障害物を飛び越えながら走り書いた、新たな年へのコミットメントが記されている。 書いた時の状況を想像して、書かれた前向きな言葉とのギャップを思う。それでもその雅をことほぐ。 そんな繰り返しにうんざりもせず、むしろ去年と今年がしっかりがっちり繋がっていることを『無事之吉祥』と喜びあっている。 人間は自分達が勝手に付けた境目の、その線の下が元通り繋がっていることに安心したりする。 それは『国境』と同じ感覚。 成人になる『誕生日』と同じ。 『結婚』と同じ。 自らが造った仕掛けの中で、そのルールに従って結果を確かめながら無邪気に真剣に生きている。カードゲームのよう。 人って可愛い。ミツバチの習性のよう。離れて全体を見ていると魔可不思議だけど、彼らなりの意味づけをしてひたすら動く。 このメリーゴーランドに私も乗って、もうすぐみんなと一緒に走り回るんだなぁ。きっとハードルの二、三個は故意に踏み倒しながら・・・。
by soukou-suzuki
| 2005-11-19 02:04
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