柔道は好きだけど・・

世界柔道を放送している。うちの旦那さんは痛いことや野蛮なことが
嫌いな割りにはマメにチェックしている。
サッカーや大好きな野球よりより盛り上がっているように見える事も
ある。
女子の「いいトコ」になると、わざわざ呼んでくれる。だが私は、半ば
有り難迷惑を感じ、あまり見る気がしない。
柔道が嫌いな訳でも、興味が無い訳でもない。
私は柔道は好きだし見れば燃えもする。
女子柔道の人口が少なかった頃から志していたし、隅っこから世界
を目指していた高校時代や、黒帯にも誇りは感じている。私の好き
な日本で生まれた精神文化の一つであることもひかれる理由の一
つだと思う。
でも、痛いのだ。見ていてると、柔道で傷めた膝が反応してしまうのだ。
膝が裏返る感触、外れた膝にのしかかる相手の体重、電流のように
る痛み、畳を叩きつけても目をつぶっても逃れられない苦痛・・・。
中継を見ていると必ず脚が緊張し、体中に無意味な力を込めてしまう。
テレビを消した後も、ベッドに入って目をつぶっても、いつのまにか目の
前に汗をかいた首筋が見えてくる。相手の拳が鎖骨に食い込み、私は
小さな苛立ちを覚える。平織りのカバーリングを掴んでいる筈なのに、
自分の手のひらに柔道着の摩擦と厚みを感じる。
「来たっ!駄目だ、考えちゃ駄目だ!」
必死でこの妄想を打ち消そうとして、何か違う事を考えようとする。
だが体は、何かの間合いをはかりながら上体を左へと捩っていく・・・。
僅かに右足が動き、そして次の瞬間には全身に走り抜ける電流を無
意識に待っている。
もちろん足に痛みは感じないのだが、脳に走る電流だけはリアルに
再現される。
こうして柔道の中継を見た後は、暫らく寝床でのたうち回ることになる。
「自分から行けっ」
「足を使えっ、足で崩せ」
「待つな、思い切り行け!」
誰かの声がこだまする。頭の中で巨大な秒針が回る。
自分の右足が空を切り、支える左足に反動が伝わる。
襟を激しく揺すぶられ、一瞬視界がブレて見える。
いつか忘れると思っていた感触なのに、中継を見ることが稀になった
最近の方が以前よりひどくリアルに甦る気がする。
ひどい時は二三日続く。仕事をしてても、電車に乗っていても、始まっ
たら自分では止められない。こういうのをフラッシュバックと言うのでは
ないだろうか。
傍から見ていても、痛くも無いのに突如体を捩って顔をしかめる姿は
危な気に見える筈だ。こんなことを繰り返すのは、体に悪いのではな
いかと心配になる。
機会があれば、一度カウンセリングでも受けて見ようかと思う程だ。
柔道は嫌いじゃ無いけれど、休日に大好きなソファに寛ぎなから中継
を見ることは、美味しい抹茶に唐辛子をどばどば入れて頂くようで、癒し
と刺激のひどいミスマッチを感じてしまう。やや自律神経が参っていまう
私なのです。
柔道を見るならいっそライブにしたい。
怪我に苦しんだ記録シーンや、技の瞬間のスローモーションが無いとこ
ろがいい。
ライブなら闘志が直接伝わってくるから、私も怪我への恐怖に打ち勝っ
て応援できるかも知れない。
by soukou-suzuki | 2005-09-12 02:29 | Hikari NOW!
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