誰も居ない深夜の千鳥ヶ淵を散歩。
外灯に照らし出されて巨大化した葉陰が続く歩道、虫食いの穴もはっきり写したされた葉を一枚一枚、渡り歩く。
今夜の月は上弦の三日月。
夜空に馴染んで見えないけれど、天空ひ大きな黒豹が居て、いまは薄目を透かしてよく眠っている。
そんな幻想が似合う月。
お土産は紅葉した葉。
持ち帰り、白いラグに置いて見て、改めてため息をつく。
凄まじく美しい。
色が、目からはいる周波数が、こんなにも直接的に感情に働きかけるものかと驚く。
琴線に触れている間、過去と今は同時に身体の中に在って優劣や後先が無い。
未来もまた、決めたり成ったりするものでなく、今の自分の中に同時に在ると感じる。
一枚の葉色からいま妄想した景色は、知らないはずのカナダの風や、よく知る軽井沢の小路の知らない季節など、未知と既知を併せ持つ風景。
それらもやがて現実というページを経て過去の章に再分類される。
しかしいづれも、私という一冊を出ない。
私の一部になっている。