それはある日、突然に見えてしまった。
寝室の壁面に作りつけたクローゼットの白い引き戸。
着物を掛けるために私が届く目一杯の高さにビスを二本、リフォームする際にお願いして付けておいてもらった。
たまたまそこにハンガーが掛かりっぱなしになっていた晩。
ふと目覚めて何気なく見た壁に、突如、視線を感じた。
そこに、大きな顔があり、恍惚とこちらを見ている。
子供のころ、天井の染みや木目の中に、突如こちらを見ている顔を見つけた…。
大人になるとこれらの顔や視線に鈍感になるものだ。
だが私は今もときおり、大小様々な顔に出くわすことがある。
おにぎりの中の枝豆の並びの中に、つぶらな緑色の眼をした小動物に出逢い、シンクが弾いた水滴の中に笑う顔がいたり、味噌汁の具が突然私に微笑みかけていたりする。
私の目には好感度フェイスキャッチがつ射ている。