2011年のご挨拶

2011年のご挨拶_c0049825_12272815.jpg改めまして2011年の冒頭の挨拶を残しておきます。

昨年は歌会初めの御題が『光』であり、新年と同時に、鈴木ひかりを辞めて「松浦ひかり」で始める新たな一年でもありました。
生まれ育った世田谷を離れ、用賀の家を売却したり、麹町に不動産を購入したり、リフォームの算段や、一連の引越しでの身辺整理、皇居と稽古場の近くで始めるシングルアゲインライフをスタートした、文字通り『ひかり元年』でした。

2011年のご挨拶_c0049825_12281425.jpgこれほど多くの方に、個人的な御世話をしていただいた年はありませんでした。いや、生まれた年はこうだったかも知れませんが。
また、行政や社会的な様々なサービスを始めて利用する機会も多く、口座の名義変更やらカードや保険の書き換えやら、まぁ面倒なことが山積み…なんだか社会人一年生に戻ったような気分でもありました。

決めるのも自分、満足するもしないも自分・・・、なんだか一人旅の心もちです。
十年以上前ですが、南米大陸と南アフリカを回って3カ月の一人旅をしたことがありました。旅程も決めず、その日その日で自分が「今日を生きる街」を選び、宿と食事を探し、それが確保されると街へ出て、工芸品や人々の働く表情を眺める。郊外の遺跡や、世界遺産は積極的に見て回り、地元料理やお酒もかならず挑戦しました。「心地よさ」を求める以前に、五感の全てで「その場」「その時」を受け入れようと想いながら旅をしていました。

2011年のご挨拶_c0049825_12285198.jpgその結果、自分がどこに在っても、誰と在っても、いつであっても、自分の心もちを決めるのは自分自身なんだと知りました。それまで、家族と一緒にいない生活をしたことがなかったのですね。

「おはよう、ひかり。今日はどんな気分?」
「寒い?部屋を暖めようか?それとも外に出てみる?」
「面白くない?ならふて寝しちゃおうっか?長旅だんだからいーじゃん!」

そうやって、自分自身の気持ちをしっかり聞いてあげることがなかったので、一人旅が生まれ変わったように新鮮だったのを覚えています。

2011年のご挨拶_c0049825_12291477.jpg以前は、先ず環境や状況に応じて、家族という集合体の目指すベクトルを確認し、そこに効率や費用対効果を考えながら進むという考え方でした。今の気持ちにそむくことでも、自分の気持ちに目をつぶって進みました。「心が入らない」というのは、御天気の「曇り」みたいに、一定期間、つねにあることだと思っていました。

いまは、自分の気持ちを真っ先に聞いてあげる習慣がようやくついてきました。

小さな白い部屋は、毎晩、夜になると私の心の核シェルターとなります。
誰にも侵されない、「素」の心を解きほぐして広げても、誰にも踏みにじられる心配のない大事な聖域です。

2011年のご挨拶_c0049825_12303996.jpg小さな白い部屋は、毎朝、破って出て行く卵の殻になります。外からの朝日が親鳥のくちばしになって、コツコツと心をノックします。私もこたえて伸びをして、やがてヨチヨチ歩きだします。
ここでは毎日が新しく、毎日がゼロから始まります。

心の穢れは、眠っている間の、闇に沈んだ白い世界が洗い流してくれます。みんなに「祭壇のように高い!」と笑われるシモンズのベッドに潜り込んで(よじ登って?)、今日の命を投げ出し、そしてまた再生の時を待ちます。

2011年のご挨拶_c0049825_12314712.jpgここを「ひかりの国」と呼んでいます。
初夏の開国以来、既に何人の訪問を受けたでしょうか。
ここでは「素」で相手と向き合えます。「素」の私はここに在ります。

今年も白い小さな部屋で、一人でも多くの皆様に逢えますように。一緒にお茶を飲んで、語り合って、黙りあって、見つめ合って、笑いあって過ごせますように。
光輝くみなさんに逢って、全ての色の光を混ぜ合わせて、また白い光となりますように。

今年も、新たにまたよろしくお付き合いくださいませ。

                                                2011.1.1 ひかり
by soukou-suzuki | 2011-01-27 00:00 | Hikari NOW!
<< 歩き初め。 モーニング >>