外国人のためのオプショナル茶会

2010年8月15日(日) 
明治神宮、桃林荘(とうりんそう)において、外国人のための神宮紹介と、日本文化体験のためのオプション茶会を開催しました。明治神宮NPO響と、洗心会との共催による奉仕活動で、響所属の通訳ガイドと、茶道部とが協力して日本の文化や、精神性を紹介する事業です。
春夏秋冬、季節ごとに隔雲亭または桃林荘で開催しています。気が付けば初めの茶会から二年半が経ちました。どの回も心に残る感動があり、自分自身が再生されるのを感じる事業です。
元気なときはもちろん、燃え尽きそうなときや、無気力なときでも、お茶を通じての奉仕は自分の栄養補給にお勧めです。
今年はくしくも終戦記念日の今日、平和と共存を旨とする茶道を紹介する巡り合わせとなりました。
テーマは「平和」、「祈り」としたい気持ちでいっぱいです。しかし一方、太平洋戦争に様々な思いを抱く国があり、またお盆や御霊供養を趣向とし、その本意をお伝えするには、私は人間としても茶人としても未熟すぎると考えました。
「だれとでも共感できるもの」、いま目の前にある自然や季節感がそれです。思えば、時候の挨拶を冒頭に掲げる習慣がこれだけ深く浸透している国が他にもあるのでしょうか。「季節の挨拶」は、「あたりさわりない、無難な書き出し」としても定着していますが、なぜここまで長い時代を経て受け継がれてきたのでしょうか。
それは、互いが主義や主張や立場を超え(さておいて)、極自然に共感できるテーマだからなのです。つまり、互いが同じ「環境」の内側で、一緒に存在するもの同士だと認識することが目的なのかも知れませんね。「共存している」と仮定し、小さな「共感」から相手と向き合うことを始める日本的コミュニケーション……、なかなかやるじゃないか!と改めて日本文化の「さりげない」「エンターテナー」に感服している昨今の私です。
そんな日本のよさを、いま自分たちにできることを通じて、諸外国の人を相手に一生懸命伝えてみること…は、一人では不完全すぎる伝達者としての自分が、仲間と力を合わせることで一つの「形を成す」ことができるという喜びでもあります。伝わったことを肌で感じることで、「手ごたえ」を蓄積してセンスを磨けること。さらに自分たちも日本を再発見して驚くこと……。それがこの事業の醍醐味なのだと分かってきました。
今回もお客様から「感激した」「とてもいい仕事をしている」「アリガトウゴザイマシタ」「スバラシイ」「参加シテヨカッタ」などの言葉と、まっすぐ眼差しに、たくさんの力をいただきました。あの眼差しによって「生かされいる=活かされている」と気付きます。
たった30分、されど、海外旅行中の貴重な滞在時間の中から、選んで私たちにくださった30分です。どの席も、心を込めて、一緒に過ごせた時間を味わいたいと思うのです。

昨今、茶会ではお茶碗が主役級に愛でられますが、外国人の方に人気の道具は「茶筅」です。ワンピース(一片)の竹が、穂先では百本に分かれている…その職人の巧みさと、造形の美しさにみなさん感動されます。外国人茶会では、席をお開きにしてから、改めて茶筅を持ち出して拝見に回すことが定番になりました。(笑)
そして私の「ハンドメイド」の茶杓、池田泰輔先生のご指導で削った自作の茶杓を用いてみました。
普段は茶杓はあまり興味を抱かれないのですが、しげしげと見直してくださる方が多かったように感じます。上手な説明するより、興味を持ってもらうことが大切なようですね。

茶席の道具は一点ずつ見れば、定番的なものや何百年も使い続ける物が多々ありますが、今日とまったく同じ取り合わせで、同じ風情の花と共演することは二度とありません。今日の茶室は今日だけのもので、茶室の景色も一期一会、常に変化する「自然」なのです。
同じように、人の取り合わせも、二度とふたたび、まったく同じという訳にいきません。ましてや、世界中から偶然集まったこの茶会の一座は、二度とここで再会することはないでしょう……。
そう話すと、みなさん大きく頷いて、改めて相客の顔を見渡します。
そして、一座建立(いちざこんりゅう)の証に、相客とスタッフで一緒に記念撮影することをとても喜んでくださいます。

床の間を前に集合写真を撮るときは、「これでも撮っておいてほしい!」と、世界中のカメラメーカーの機種が、スタッフの前に差し出されます。(笑)
いまこの瞬間、ここにしかないもの……、目に見えているようで、「意識」しにくいものですね。再生不可能な「今日」ですが、この一期一会は、カメラに収まり、世界中に持ち帰られ、人を介して各地で語られるのだと思うと面白く不思議です。

当日が「秋の気配」となるか、溽暑真っ盛りとなるか、いずれにしても、夏から秋に代わったときの「ほ」っとする気持ちになれるおもてなしがしたいと、テーマは「立秋」や「新涼」におきました。
しかしこの日は暑かった・・・。不快指数満点!

お陰さまで桃林荘は、空調が効く茶室。玄関の硝子戸を引いて一歩入れば別天地です。私は終日、この茶室でお客様を待ちかまえていましたが、響のメンバーは暑い暑い参道に一日立って、茶会のご案内・・・。本当にお疲れ様でした。

今回は茶道部も響さんも初めて参加のスタッフが大勢いました。新しい人が参加してもらえる事業…魅力的だという証と解釈しています。

車を出してくれた木村さん二日間お疲れさまでした。
茶道スタッフ各位、響メンバー各位、明治神宮の宮司・職員の皆様、茶室管理の明治記念館皆様へも、厚く(熱く)御礼申し上げます。この事業が末永く続き、関わった者が多くの感動と発見を得られますように…。
いつもお菓子をお願いする吉祥寺の長野先生、お盆休みの初日の早朝に、お届けいただき恐縮至極です。先生の和菓子への思いも、一緒に「海を越えろ!」と念じてお出ししています。
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国際事業長の猪俣氏よりメールの一部を紹介。

NPO法人響 猪股です。
本日は暑い中、活動へのご参加ありがとうございました!

皆さんのご協力のおかげで、
◆お茶会参加:12カ国から34名◆
◆本殿までのフリーガイド:5組合計20名?程度◆
と、今回も多くの外国人の方に日本文化を知ってもらう
機会を提供することができました!
本当にありがとうございました。

>>茶道部の皆様
事前準備/当日のお茶会開催/原宿門での呼びかけサポートなどご協力誠にありがとうございました。
特に、お盆期間中ということもあり、人集めやお菓子を初めとする準備は大変だったかと思いますが、おかげさまで今回も無事にイベントを終了することができ非常に感謝しております。
今回がお茶会初参加のメンバーにとっても、すごくいい経験になったと思います。

尚、参加外国人の方の感想などがまとまりましたら、別途フィードバックさせて頂く予定です。
(後略)
by soukou-suzuki | 2010-08-16 23:33 | 茶味禅味俳味一味
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