野点箱は玉手箱。
昨秋、時はちょうどF1の頃、シンガポールに一人旅したおり、ラッフルズのプールサイドやスイートへ続くテラス風の廊下で、午後の抹茶を一服するときに似合うような、リゾート感覚いっぱいの茶箱が欲しくなった。
翌日、アラブストリートとチャイナタウンを迷走。
一人旅の思い出とリアルを閉じ込めた土産品たち。
それはつまり自宅にひしめくガラクタたち…、だが一度お茶となると、エキゾチックもプリミティブも、持ち味すべてがお宝になる。
各国からきた客人を、みな心地よく受け止める、ラッフルズみたいな茶箱が欲しい…。
私にとっては玉手箱みたいな野点箱。
地球のあちこちで集めた見立て道具を取り込み、それぞれのテーストの違いを、違和感ではなくオリジナルに昇華できる、懐の深い子はいないかな…と、店の隅々までしゃがみこみ、のびあがり、覗き込み、掘り出したあの日。
今日、野点に使って、またあの日と、それぞれの道具に連なる旅の記憶を新たに旅しました。
インドネシア製の入れ子ボックス。
野点用具入れ、いや玉手箱に使っています。
鈴木ひかり
国際野点協会松浦ひかり