ディープ・・・ in 京都 その14

柊家、その2

ディープ・・・ in 京都 その14_c0049825_026387.jpg老舗旅館の新しい顔も見せていただいた。設計を任せられるのはこれが初めてという若手設計士を登用し、目玉は、一面ガラス張りで柱のない広間。和室の和みをそのままに、テーブルを置いて、椅子に腰掛け、体もリラックスして食事ができる空間が、老舗にも求められている時代のようです。

ディープ・・・ in 京都 その14_c0049825_0271410.jpgぐるりと部屋を取り囲む縁側と庭。闇の中で幻想的に光る緑と水の揺れ動く表情は、野外能を見ているような幽玄の世界。景観の連続性を重視したのだろう、柱で視覚を分断しないようにする替わりに、一階の屋根を支える構造物が必要だ。なんと隣の壁から釣るようにして支えている。一歩外に出て見上げると、海峡を渡る橋脚を見るよう・・・。


ディープ・・・ in 京都 その14_c0049825_030331.jpg秀逸の一品!新館の浴室のシャワー口。天井にあいた柊の形の穴からシャワーが落ちてくる。旅館を越えた、大人のリゾート♪アマンに居るみたい(^^)
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光の取り入れ方は随所に工夫がある。気が付くと、設計者の意図どおりに視線を動かす自分がいる。誰かの意図に操られるのも結構心地よい。




ディープ・・・ in 京都 その14_c0049825_0384413.jpg設計者、女将、従業員、文人墨客、ここに関わる全ての人のオーラで、より互いが心地よくなるようにスパイラルしている場所・・・、でもやっぱり太陽や木々と言った自然に操られるのが一番快感なのだ。(^o^)/
翌朝。庭の木漏れ日は、ルノアールの絵に見る、青いピンスポットの丸ぁるい影を、飛び石の上に幾重にも重ねていた。



ディープ・・・ in 京都 その14_c0049825_0395284.jpg朝食。湯豆腐が胃袋にそっと今日の調子を尋ねてくれているみたい。
お魚も美味しい、白いご飯が美味しい、お汁が沁みる・・・でも、京都はどうしてお漬物がこんなに美味しいのだろう?どうして世界七不思議に入らないのだろうか?!




離れたくはないけど、「見送られる」という最後のご馳走を受けに、幾多の旅人と同じように笑顔で門を出た。振り返っても、振り返らなくても、背中から沁みてくる見送りの視線。角を曲がるまで、いや曲がってもなお振り続ける大女将と葵さんの手。
ディープ・・・ in 京都 その14_c0049825_0491258.jpgディープ・・・ in 京都 その14_c0049825_0493191.jpg










過度な演出がない、インパクトを押し付けない、あくまで「我が家」であろうとする旅館、柊家さん。特別な日を造り上げるのではなく、何気ない今日の幸せを、やんわりと、でもしっかりと影からサポートしてくれる、そんなお宿です。数回、数十回と来るうちには、きっと我が家より愛しい空間に、心の中で成長していってしまいそうです。
眠りも、目覚めも、自然すぎて言葉にならないのです。強いて表現するなら、あの日のタレパンダと天使の中間の微笑を浮かべたままの私の顔をお見せするのが手っ取り早いのではないか・・・と、情けなくなる。これにて筆を折り、柊家さんの感想をお仕舞いにいたします。
by soukou-suzuki | 2006-10-20 00:41 | かわいい妻には旅をさせろ
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