初体験!「収録コンサート」なるもの。
新日本フィルハーモニーの賛助?会員の方から、招待券をいただきました。仕事をベルサッサして、JRで錦糸町へ向う。 錦糸町のすみだトリフォニーホール自体お初でした。正面のパイプオルガンが、茶室の「床(とこ)飾り」を見るようで、心が引き締まって気持ち良い~。本格コンサートホールでした。洗練されたホール特有の空気感ってありますよね。パリやウィーンのオペラ座へ行ったときのことがフラッシュしました。プログラム売りのベルの音、大理石の床を歩く靴音、フランス語のさんざめき……。 雨上がりの夕暮れ、バーコーナーはグレーがかった自然光にぼうっと照らされていて、バスティーユのオペラ座や国際フォーラム、あるいは曇天のオルセー美術館にいる気がします。 現地で引き換えた指定席は1階4列の3番、連れが4番。かぶりつきの一番左はじで、バイオリンの最後尾の後に据えたチェンバロを真前に見る位置でした。この席は、オーケストラの音が完全に混ざりきっていない、「生」のままの音が耳に届くので、一番絞りというか、フードプロセッサーのはじっこで少~しだけ形が残っている野菜を見つける時のような、そんな自分だけのディテールが見えてくる席でした。 無理やりですが、お茶でたとえると…、S席や収録CDの観賞が「中国磁器の完璧な丹精さを愛でる」行為なら、昨夜の経験は「国焼きのゆがみ」や「土見、かいらぎ(ひび)」に漂う侘び寂びを見て、手で触ってみる「お拝見」シーンのような臨場感があるのでした。 最近わたくし、物事の段取りの悪さから、自分自身の能力(やる気?)の低さに苛ついたり、急に魅力の乏しい人間だと感じたりしてちょっぴり落ち込んでいた時期(だったような?)ので、演奏の最中に金管の響きが天上を刺さんとする瞬間には、何度も「私を魂ごとすぅ~っと天空まで持っていって~!」という気持ちになりました。(正面のパイプオルガンのかなり上のほうまでは行けたけど、そこからホールの天井を突き抜けることはなく、後はゆ~っくりと舞い降りてきちゃったな、という感じでした^^;) 「フィガロの結婚」を聞くと、反射的に「これからオペラの幕があくぞ~!」っという期待感がモリモリしてきました。高揚感という意味では、ジェットコースターに乗っている3分と、この5分、どっちも同じ「どきどきの数分間」なんだけど、人の体って本当にいろいろな「色」で感じ分ける機能が備わっているものですね~。なんだ、自分も結構、高性能じゃない。(←”使える”かどうかは別として) 「ジュピター」が、後世についた曲名と知り妙に納得。ジュピターの壮大な曲相のお陰でこちらの志が高まり、聞いているうちにいろんな人を、とりわけ自分のことを許してあげられました(^^)v さてモーツァルトの後で聞く、『展覧会の絵』……。開演に先立って行われたプレ・トークでは、この取り合わせのことを、「贅沢と言うか、お寿司の後のステーキのようなもの!」と表現していたけれど、いや~お寿司とステーキくらいならぺろっと行っちゃう私としては、「日光浴と海水浴の後で、富士登山した」気分でしょ、と思った。トニカク、充実しました! 「展覧会の絵」は大好きな曲。だんだん好きになるのかも。展覧会の会場で、絵を歩いて見て回っているのを音楽にしたもの。最初は曲と曲の間に、都度”プロムナード”を歩いている曲が挟まる(絵から現実に戻ってくる)のだけど、だんだん絵に夢中になっていくのか、プロムナードを挟まずに次々と絵の主題の曲が続くようになる…。後半はバーチャルの世界に浸る感じ。連れの「カタルシス~!」という言に賛同。 この曲を聞いていると、いつもの「私の絵」がそれぞれ見えてくる。その日の演奏によって、体調によって、一緒に聞く相手によって、微妙にその絵は異なるけれど、曲ごとの絵のイメージがある。 この曲から感じた絵を、いろんな画家が画きあって、「その共通点と違いを楽しむ」という企画展をやってくれればいいのになぁ。私は「小人」の怪しさ、「古い城」の深さと寂び、「キエフの大門」でプロムナードと混ざり合ってぶつけ合って蹴飛ばしあって振り絞る感じが好き。でも今回新たに気に入ったのは「殻から出きらない雛の踊り」…、コンダクターが可愛いっっっ!!(@@;)指揮台の上で本当にぴょこぴょこしていらっしゃいました。昨日はとにかく指揮者に釘付けでした。(^^) (写真は丸の内夕景 こんな色の光を浴びると、まっすぐ帰れなくなる) 演奏後、「ジュピター」では2箇所、「展覧会の絵」では6箇所のリテイク(再収録のための演奏)がありました。(6箇所は思ったより多かったのか、オケのみなさんがざわついてました)「では11ページから」「では51番から」「…の3小節目から」、なんて途中からでも、速攻でその曲のその場のテンションに入っていけるって凄~い。ドラマの収録みたいです。 リテイクって、初めてでしたが、演奏家の『素の顔』が見えちゃう。その分、一つ一つの「音」にすごく愛着が湧く。最初の演奏では、途中で止めることはないので、初演は完璧なコンサートである。初演ではアーティストを見て、リテイクになると職人に変わる演奏者たちを堪能しました。 音楽を聞きに行ったといっても、結局は『人間が人間を見に行く』わけで、そういう意味では、コンサートより、もろライブでした。ん~、美味しいっ。私はこれが相当気に入りました(^^) でも、年末の「第九」と「ニューイヤー・コンサート」には、ばりっと着飾って真剣勝負で挑みたいな。誰か連れて行って!
by soukou-suzuki
| 2006-08-10 02:51
| Hikari NOW!
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