将棋世界 Ⅲ

水曜日、会社をお休みして純粋な休暇。純粋な休暇とは、お茶のお役目も入っていないという意味です♪この日は、住み慣れた東京の、私の知らない世界を覗いた一日でした。
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青山一丁目からタクシーで10分(880円)で、千駄ヶ谷富士で有名な鳩森神社(はとのもりじんじゃ)のすぐ目の前の『将棋会館』へ。外苑周辺や静かな住宅街のうっそうと茂る緑を縫って、会館に到着したのは待ち合わせより早めの時間だった。しばらく将棋会館一階の売店で珍し気に将棋グッズを物色する。巨大な駒の置物は、「鮭を咥える熊」同様、私も何度かお屋敷の床の間や玄関で拝見したことのある典型的ジャパニーズ・オブジェです。駒、将棋盤ともに木材は黄楊(ツゲ)が多いが、素材、作者、誰の書いた文字か…などでバリエーションは様々。中には斑の出た高級な木材に、盛り上げで文字の施された百万を越えるセットもあり、工芸品として惹かれる…。ガラスケースには脇息も並んでいた。なぜか「ひかり」印。製造元なんだろうか?青山に居た祖父のイメージは、脇息(肘掛け)と碁盤と分厚い紫の座布団だった。あと龍角散の銀の缶かな(^^; 私もいつか、「本物」を我が家の縁側に面したお座敷に置いて……って、我が家には既に「和室」がありません!(でもいつか古民家、買えたら置こう^^) 当面は大理石のチェス盤かな?
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棋士先生の「書」も目玉商品のようです。今回招いてくださった島朗八段の扇面は『百尺竿頭』(百尺もある竿の先端。すなわち到達すべき頂点)でした。ふむふむ。他にも直筆の掛け軸、扇面、色紙には「五風十雨」(5日1度風が吹き、10日に1度雨が降ること。転じて風雨その時を得て農作上も好都合で天下の太平なこと)や、「行雲流水」(空を行く雲と流れる水。すなわち一点に執着なく、物に応じ事に従って行動すること)などなど、襟を正すべきご染筆を多数を拝しました。

真の将棋ファン2名と待ち合わせ、3階の応接室で島さんを待つ。ここにも将棋盤が備え付けられている。挨拶を終えると、早速島氏について4階の「対局室」へ……。会館の廊下はちょっと暗めで、その分ドキドキが増した。
広々した日本家屋的な「大玄関」があり、そこで靴を脱いだ。(ここまでは牛込にある茶道会館のような造りで馴染みがあるが、)その先は細い廊下と幾つもの小部屋に分かれており、ちょっと旅館めいている。各地の旅館で名人戦が行われるのは納得!言わば全国各地に将棋会館を持っている国こそ日本なのだ。
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先ずはA級順位戦(羽生-郷田)が行われている「特別対局室」へ。茶会の時以上に緊張する「席入り」…。盤を挟んで向かい合う二人のすぐ側で、自分も同じ空気を吸っているのがなんだか不思議。畳を静かに歩き、立ち座りに慣れていて良かったよぉ(T_T)と、日頃のお稽古に感謝。それにしても先週の就位式でお会いした羽生さんとは別人の気配。(当たり前か) 座った時に一瞬、羽生さんと目があって「どっきり!」。(ハートマークの「どっきり!」じゃなくて、「びっくーん!」の方ですよ^^)でもネクタイが可愛かったです。TVより実物の方が素敵。やや斜めから見ていたため、郷田さんの表情はよく見えず…、ただ、正座で重ねた両足の指の先が、始終忙しなく動いていたことと、息遣いが聞き取れる程だったことが印象的でした。ほとんど盤を睨み合っていて相手を見ることは無かったけれど、ずっと水のような気配の羽生さんが、一度だけちらりと(でも割としっかり目で)郷田さんを見上げた顔が脳裏に残りました。(正面から目が合ったら結構怖いと思う…睨み返すだけなら私にもできるけど ^^;)許されればずっとカメラを回してドキュメンタリーを撮りたい気分。勿論、正味2分ほどですぐに退出。
次に「飛燕」の間で行われる女流名人「中井-松尾」戦へ静々と席入り。次の間の「人事尽待天命」の掛け軸を正面にして座るのは中井さん。お気に入りの銘柄のペットボトルを3本脇に置き、フレアーの効いた茶系のワンピース姿に、ウェーブのかかった長い髪をバレッタで留め、腕組みしたまま少しだけ斜に、相手と盤を交互に睨みつけていました。(カッコいいお姉さま。上司風です)将棋盤が目線より下にあるから、小さな動作で相手をチラッと見るときには、必然的に上目遣いになるのね。それが結構、絵になるものだと理解しました。松尾さんが一手挿し、中井さんが直ぐに続いたところで退出。ふぅ~っ、あれ以上いたらこちらの呼吸が止まってしまいそう…(^^;
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        ↑将棋世界デスク田名後氏
将棋道場(平日はガラガラ)を覗き、地下の編集室へお邪魔しました。そこで将棋世界の年間定期購読の申込書を書くお二人…。デスクの田名後さん、西村次長、デザイナーの山崎さんとご挨拶させていただき(昨夜は皆さん徹夜仕事だったそうで…出版はどこも戦っていると感心!)して外へ。隣のけんぽ会館で4人でランチしました。
メキシコ水フォーラムで、皇太子さまが通られた後に急に周囲が和んだように、緊張する空間から出て一緒に食事したら、4人の間に急に親しみが出ました。まさにお茶で席をご一緒した「連れ」という心持ちです。同行の「真の将棋ファン」2人は矢継ぎ早に質問と感想を繰り出し、「入門・小習・駆け出しで、”草”の将棋ファン」である私は全く着いていけませんでした。
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島さんが理事会までまだ時間があると言うので、食事の後はLUPICIAでお茶とスィーツをいただきました。甘いものが挟まれば、更に親密に(^^) 次回は料亭の和室を取って、島先生による『初心者将棋講座&懇親会』という一大企画を仰せつかり、手帳に記して大満足。来る7月22日、私が終に将棋を挿します!(宣言する程の事じゃないかも ^^;)
ここで島さんとはお別れ。本当にお付き合いありがとうございました!(島さんが仕事へ向かい、サラリーマン達が自由の身に…という構図は超珍しいのです!)
しらふなのにイイ気分の3人は更に、近くのとちぎ屋という蕎麦屋へ入り、案の定、生ビールを1杯…2杯、3杯と、板ワサ・枝豆・蕎麦味噌……という親父セットで閉店の三時半まで粘った。ひたすら真顔で将棋談義する真のファンを前に、それらを珍獣扱いでせっせと写真に納めるわたくし。何かこの二人、親友めいて見えるわ!
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二人と別れ、私は気になっていた鳩森神社へ立ち寄り、菖蒲を愛で、千駄ヶ谷富士を登頂し、柏手を打ち、献歌箱に1首歌を献じ、おみくじを引いて、蚊に刺されて満足して帰りました。(旅立ちは遠いところに利あり!待ち人、来て驚くことあり!商い、買うに利あり…だそうですよ。)
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「これでや~っと帰るか!」と思うでしょう?そこが甘いの。伊達にウン十年も道草食ってきてないの。駅へ向う途中で、R-SHOP千駄ヶ谷店に遭遇。インドネシア直輸入の家具や小物を扱うインテリア・ショップで、軒先に積んであった素朴な香立てをお土産に3つ購入したのに始まり、ターコイズ・ブルーのビーズ・アクセサリーを2点と、リビングの飾り棚に置きたくなった真っ赤なジャンガラ・セラミックのボウルをせつな買い!何やかんやと、「引き出物か!」という大きな紙袋を持って、チャリティー映画会へ向うことになってしまいました(^^;
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四谷で乗り換え、丸の内線で霞ヶ関へ。イイノ・ホールで「明けの星会」という慈善団体が行うチャリティー映画会で、「THE WHITE COUNTESS(上海の伯爵夫人)」を常陸宮華子さまとご一緒に鑑賞。
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事故で家族を亡くし、盲目になったアメリカ人の元外交官が、自らの第2の人生を投影したユートピアである”理想のバー”を創り上げる過程で、零落したロシア貴族の未亡人と恋に落ちる話。謎の日本人Mr松田(真田浩之)が名脇役で登場し、最期に壊れていくユートピアに落胆して座り込む主人公に向って、「伯爵夫人と新しい(第3の)人生を歩むべきだ」と示唆して去る。日本軍の砲撃に燃える港で、伯爵夫人と愛娘を探し出し、ユダヤ人一家とマカオへと落ち延びようとするところで映画は終わる。伯爵夫人の美しさと悲劇性、母性と女性、人生を切り開く強さと、愛する者を失った弱さに揺れるソフィアは、風とともに去りぬのスカーレット・オハラとシンクロする。ロシア貴族の優美なダンスシーンと懐古主義、それと裏腹な零落してなおプライドが棄てられない為の冷淡さ、ヨーロッパのエスプリを効かした”魔都・上海”のバーの甘美な妖しさ、アジアの小路の猥雑さと強(したた)かさと人情味、世界に野望を抱く外交官達の生甲斐と矛盾…たっぷりと綾なす人間の感情を映像化した美術作品でした。お隣も淡交会の先生方で、第4西支部の先生方と開演までお話させていただき、終演後は元木さんとイイノビルの地下の中華で飲みなおし!(^^;何とかその日中に自宅に到着いたしました。
by soukou-suzuki | 2006-06-26 00:39 | Hikari NOW!
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