フェーズ10

仕事のお付き合いで飲みました。
今まで機会がなかったのが不思議なくらい。そういう相手って意外と多い。

取引先に限らず、趣味の延長にある組織でも、かたよったメンバーで懇親会を
繰り返し、何年も一緒にいて一度も飲んだことがないメンバーもいる。
飲み会のステップを踏まなくても意気投合してしまうこともあるにはあるけど、
やはりフェーズ10(10段階目の仕上げ)と呼ばれる「飲み会」は必要だと思う。

何か一つのことが始まったとき、お互いが「事業の目的」だけを目指して、合理
的な「winwinな結論が出ればそれでいい」と思った時期もあった。
でもそれだけだと、想定外の困難にぶつかって、こっぱ微塵になってしまうこと
もある。
局面は常に変わり、いつのまにかスタート当初とは様々な条件が変わって、
気がついたら「諦めること」が両者にとって最善の道になってしまうことだって
ある。途中で止められないことをする時は、このフェーズ10を経ているかどうか
で結果が変わることがある。

事業に参画する人たちの目的は、事業そのものの目的とは別のところにある。
それが自然だとも思う。
だけど困るのは、計画を通じて無理やり自分の思いを遂げたり、酷い場合は
自己実現の舞台として、計画そのものを消費してしまう人もいるということ・・・。

計画は過去の絵に書いた餅だし、人間は生身で自分の「考え」だけでなく
「思い」に満ち満ちて現実を生きている。
さらに状況が変われば、ドキュメントの解釈の仕方もまちまちになるのも仕方
がない。演劇評も史実も、時代が変われば解釈は変わっていく。
それでも関わる人々のゴールが同じベクトルでないと「推進力」にならない。
最も相応しい一致した目的とは、プロジェクトを「終わらせること」なのではない
かと思う。「なし終えること」、それを目的にすることで、合意し妥協し助け合う
ことができる。
最初は立場や利益で対立することがあっても、「終わらせること」が共通の目
的になれば、対極にあった利害関係も次第に一致することになる。

困難な局面では、業務上与えられたポストや職種だけでは回らないことも
ある。
偶然か必然か、とにかくその場にいる全員の「個」の持つ多面性を総動員し
て、ゴールまでの道筋に生まれる”隙間”や”穴”を埋めながら、お神輿を神殿
に届けることが必要になる。
そんなとき、業務上は知る必要がないように見える”個性”に触れておくことが、
身を助くことにつながったりする。

やっと実現した飲み会は盛況だった。
「人となり」はすでに知っていたつもりでも、出身地や家族構成、前職や趣味の
詳しい話など聞くと、その人が急に立体的に、天然色で見えてくる。
「明歴々露堂々」のナイスガイは、自らの社内恋愛について語りだした。
会社きっても美人お嬢をゲットした彼は、傍からみてもとっても嬉しそうだし、
それが今の自信につながっていることも表情で分かる。きらきらしていた。
私にも語って聞かせる職場の恋が欲しいが、そんなお宝がないので、仕方な
く、趣味や旅の話をする。それなりに陰影はあるけど、色艶に欠ける話・・・。
まぁ、それでも十分に相手にとっては「意外」らしい。

意外って・・・・?
他人を見て、何を基準に「こういう人」と判断するのだろう。
自分を含め、その単純さ、安易さがおかしくなる時がある。てんで的外れなこと
が多い。飲み会を経ると、キャラクターに想像と違った色や影がつく。
そうなると、また勝手な判断力が質量や手触りなども想像させる。
きっとそれも既知の分類学に従っているだけなんだろう。

情報が多いと、一人の人の名前から多くの連想をつなげられるようになって
いく。沢山の連想の枝葉を持ったキャラクターこそ、確実な自分の財産なの
だと思っている。
自分の翼を生やすのは至難の技だけど、もともと飛べる人に引っつかんで
もらって、一緒に水溜りを飛び越えることならできるかも知れないから。
飲酒を勧めている訳じゃないけど、飲むことは正当化している私です。

              ★秋風に揺れる芭蕉の生家の芭蕉の葉★
フェーズ10_c0049825_19125810.jpg

by soukou-suzuki | 2005-09-21 00:07 | Hikari NOW!
<< 9月大歌舞伎&吉兆 柔道は好きだけど・・ >>