悲しさに効く薬「癒し度」調査

昨夜、些細なことから急に津波のような虚しさが込み上げてきた。
もうお姉さんだから、こういうのは初めてのことじゃないし、幸か不幸か翌朝以降も息をつく暇もないスケジュールだから、どよよ~んと惨めさを肴に孤独を味わうのも、ちょっと違う気がした。
ここは一つ、平常時には量ることのできない、障害時の対策調査をしようと思い立った。
心に津波がきたときに、何が自分にお薬になるか、処方箋を書いておこうと言う訳。
家に帰りついたのが零時を過ぎていたので、取り敢えずお風呂へ。バスタブに湯をはり、涼風設定で浴室に風を創る。クナイプのバスソルトから、気持ちのリフレッシュにもなるミントを選んで濃いめの味付けで完成。仕上げに浴室スピーカーをONしてCDをかける・・・。
と、ここまですれば普段のストレスは流し尽くせるのに、今日の津波には効かない。
バスタブの中でもため息連発。
念入りに冷やした部屋で、湯上がりのソファと団扇を占有しても駄目。見兼ねたパートナーが、「ストレスにはイソフラボンが善いんだよ」と冷えた豆乳をグラスにナミナミ注いで差し出す。嬉しいし美味しいけれど、ひゃっくりのように、自分じゃ止め様のない「あ''~っ」と言う叫びを繰り返す。
これはもう寝ずの自己精神分析で、忘却と言う薬ではなく、病原の切除しかないと思っても、落ち込みの原因である事実関係の追求に必要な資料が手元にないからそれもできない。
このまま一晩を過ごすのか?神よ、これはあなたが私に与えたもう試練なのか?と思った時、I-PODシャッフルから流れたのは透き通った賛美歌の声。
バスソルトのミントが入り込めなかった体の内側の隅々へ、そのメロディーは難なく行き渡る。
心臓や首筋や髪の毛の一本一本に絡み付いていた「あ''字の素」を、リンスと共に聖水が洗い流して往くのをはっきりと感じる。
なんだこれは?
今までにも賛美歌は聴いたことあるのに・・・。
そうか、キリスト教徒でない私は、大抵は旅行先の海外の大聖堂か、知人の挙式か葬儀かでしか賛美歌をじっくり聴いたことがなくて、こんな風に自分に救われたい気持ちがある瞬間に聴けたのは生まれて初めてのだったのだろう。
あれあれあれ、と言う間に肩や喉やつかえが取れて、後は自然にシモンズのベッドが神様の下へ連れていってくれたらしいけど、爆睡してたせいで、ついぞお顔は拝見できなかった。
恐るべし賛美歌パワー。いつもポケットかお化粧ポーチに忍ばせておきたい常備薬だ。
毎週日曜日に礼拝に行くほどは落ち込まないタイプだけど、救われたいときに足を向けたからといって、気分を害すほど神様はちっぽけではないはず。
それは阿弥陀さまもお伊勢さまもおなじこと。
読経のリズムも雅楽の響きもお唱明の揺らぎも、昔ながらの実績ある特効薬なのかも知れない。
体と心が最低限の調和を取り戻したら、朝日を浴びて歩きながらの、ルイ・アームストロングが歌う、WHAT A WODERFUL WORLD! が嬉しかった。お宮さんの大樹から聞こえる囀りと渋く甘い声は、野外劇場で聴くオペラのように身体ごと包み込んで、私を大空に投げ上げてくれる。
また津波がきた時に、浮き輪やボートにするのは何という曲になるのか、楽しみどもある。
でも、天災は忘れた頃にやってくるんでしたね。
by soukou-suzuki | 2005-07-14 23:15
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