とある11月の日曜。
清水谷で新内を聞きにきた。
家から歩いて五分の清水谷。それでも着物で出掛けたくなる小春日和。
インディアンサマー、老婦人の夏、と呼ぶに相応しい日和。
清水谷公園内の、まだもみじしていない楓は青々として初夏を思わせる。
稽古場として親しむ座敷で、今日はお客様。
人間国宝の技を味わい、花結界と緋もうせんの映える茶箱点前で一服の抹茶をご馳走になる。
新内仲三郎氏、直筆の軸。誓いあった夫婦を歌った、こちらも味のある一服。
豊かさとは、身近にある価値あるものを見落とさない目を持てばすぐに手に入るもの。
心の筋肉がしなやかに伸びをした午。