自分探しの先に見えた光

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空港に目覚め、再び熱々の「ひまわりシャワー」を浴びる。空調で冷えきった体がほぐれ、心身ともになめらかに動きだした。
リッツかマンダリンかとみまごう清潔でゴージャスな洗面室。でもメイクアップにはやや暗すぎる。大理石の洗面台はたっぷりの奥行きで、鏡に近寄ることができない。「ちょっぴり暗すぎる。…そう思わない?」隣で身繕いしている、艶やかな長い黒髪の女の子に話し掛けた。互いに存在を気に掛けながらも、まだ一度も目が合っていなかった。緊張と警戒に縛られていた彼女の表情が一変して、魔法を解かれたように笑顔が開花した。
「あなたは綺麗な顔をしている」
朝一番にかけられた言葉が「美しい」だなんて…。二十代の女の子からの甘美な言施に力をもらい、会話が、いや気持ちがか?はずんだ。
「お一人?私はいつもだけど…」「はい。初めての一人旅で私には大冒険なんです。」アドベンチャー……その言葉で私は一気に十数年前の、初めての一人旅をフラッシュバックした。自分の人生を見つけだそうと一生懸命に行動しているやみくもな自分。鏡をとおして見るアジアの女の子に自分を重ねずにいられなかった。私のワンダはどうしているかしら。アルフレッドは?教授は?ドクターは?ペルシーは?みんなみんな親切だった。私に関心を示してくれたのが何より支えになった。旅先では双方の関心が噛み合わなければ出逢いようがない。私はいま、このアドベンチャー・ウーマンに関心を寄せることで、彼女の冒険を支えたい。
名刺を出すと、「ひらがなは読める」といって「ひかり」と音にした。彼女の名はSUNHEE。音にすると「ソンヒ」。(sunghee)
「名前に意味はある?」と聞くと、「ソンは事で、ヒは明るい、つまり明るい事、輝くもの、です。ひかりさんは?」
「光よ。私たち似てるわね。」
「すごく嬉しいです。それにたくさん旅をしている貴方が羨ましい!」

一緒に朝食をとることになった。彼女は昨晩、空港で買ったばかりのポラロイドカメラに電池やフィルムを仕込んでいるが、なかなかどうして…私みたいで、説明書をまったく見ない。電池のプラスマイナスを合わせないから起動しない。二人の初の共同作業は、記念撮影にいたるポラロイドカメラの取り扱い説明書の解読だった。
空港ラウンジでツーショット撮影。さっそくその一枚に、「ひかりさんへ」と自分の名前を書いて、記念に私にくれた。最近みた韓国ドラマ「パリの恋人」のワンシーンを思い出さずにいられない。その事を口にすると、韓国人の彼女は大喜び。次々に共通する韓国ドラマや映画の話になる。私は韓国へは済州島しか行ったことがないが、JSDなどロケ地として使われるため、いまだソウルに行ったことがない私も多少は話すことがあってほっとした。

ブギス近くのサルタン・モスクにラマダン明けの振る舞いを受けに行きたいという。それならとチェックインして二人で部屋へ。身軽さはそのまま行動半径の広がりになる。
意気揚々とのモスク前のKANG PONG CAFE で遅い朝食。
こうして見るとソンヒちゃんは弟のお嫁ちゃんに似ている。
みんな誰かに似ている。相手の中に、好きな人や親しい人、ある時は自分自身を見いだして関心を示す。似たところに惹かれ、違う部分を知り、受け入れることでより新しい自分に出逢う。
ソンヒに自分を見つけ、ソンヒにない自分を見つける。
by soukou-suzuki | 2009-09-29 06:42 | Hikari NOW!
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