星霜抄 ~宛名書き追想~

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星霜抄  ~宛名書き追想~

オンライン月釜に向けて
伝票を書いて
休んでまた書いて…

昼の部の分を終えたらちょうど
ボールペンのインクがなくなった

オンライン月釜のお陰で
近年希に見る現象として
こうして毎月
ボールペンをも成仏させることができる

複写の伝票書きは筆圧が要り
長い勤務時代の苦手作業の筆頭だった

オンライン月釜になり四回目
いつの間にか
楽しくて好きな作業になっている

楽にする工夫をするより
楽しくやる工夫をしたい

たくさん字を書くようになり
手先から頭脳にかけて
よい刺激になっていると感じる

電送データの恩恵は
BからMへ、GからTへ
ギガだテラだと
文字通り『計り知れない』膨張を続けているけれど
人生の豊かさにはさほど比例しない

書いて書いて
文字とお人とを
幾重にも重ねて重ねて
また重ねていく

文字の向こうに浮かぶお顔
住所地名から浮かぶ風物を背景に

それらを重ねて見る
大切な人々の映像が
次第に深く濃くなる…

その昔
仕事しながら青年部組織の仕事を
わんさか抱えた時期があった
200通の郵便宛名を
データ印刷したいと話して
当時の組織長の先生に叱られた

理不尽だと感じたのだと思う
勤務先では1分でも仕上がりが早く
均一正確であることが尊ばれたし
履歴が残ることは重要な要素だった

常に新しい手順についていくため
仕事帰りに講習を受けたりしていた

夜中に帰宅してから
どうして落ち着いて字が書けるだろう?

青年部のコンファレンスがあり
分科会で塾長だった大樋さんに
宛名を印刷してはいけない理由を尋ねた

しばらく私の目を見つめて
気持ちを汲むような時間があり
やがて静かに口を開いた

僕らが目指しているのは
スローライフなんだよね…

私はなんと答えたのだろう
記憶にない

当時の私は
スローライフに憧れはしても
目指してはいなかった

穏やかさを得るのは
計画や努力や目標とは無関係の
異次元の世界だと
思っていたのだろう

むしろすべてを諦めたり
望まなくなる状態かと
思い込んでいた(笑)

お茶の世界にはスローライフを維持して欲しかったけれど
見えない下働きまで手作業にこだわることに疲弊していた

目指すベクトルならば
苦にならなかったのだろうから
あの言葉はまさに禅問答

あなたはどう生きたいの?
あなたは宛名書きでなく
本当はなにがしたいの?

あれから25年経った

いまは青年部からも支部からも
京都からも印刷の宛名で郵便が届く

手にとる度に思い出す
宛名を書くたび思い出す

やりたくないことを
やらねばならないと思い込み
やり方を変えれば嫌でなくなるかと
見当違いな努力や工夫を重ねていた

ふふふふふ

そろそろ次のやり方にしたらと思いながらも
またこの追想にふけり
苦手な字を書き連ねている

楽しいからに違いない

(松浦ひかり facebookから)
# by soukou-suzuki | 2020-09-22 17:02 | Hikari NOW!

星霜抄 ~後継者問題~

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星霜抄 ~後継者問題~

連休に入る前の忘れたくない日常

佐川急便のサービスドライバーさんと玄関先で話をしていたときのこと

近くの栗木台小学校の下校時刻で
たくさんの小学生たちが
森の小流れのように
さらさらちょろちょろと
軽やかな音をさせて
通りすぎていく頃だった…

低学年らしき二人の女の子が
数寄屋門の前を通りかかり
開いている引き戸の前に並んで
秋空に響く元気な声で
声を揃えて挨拶して来た✨

『こんにちはーっ!!』
(くりっこ達はいつも挨拶上手)

『はい、こんにちは☺️』
(エプロンを直しながら)

『この家の持ち主の人ですか!?』
(眼鏡をかけたおかっぱ頭の子からの突然の質問!)

『え?あ、持ち主?
はい、まあ、そうです😅』

(嫁に来て8年になるが、家主を名乗ってよいか躊躇する…が相手は小学生だし、この家は夫の、とか細かい説明は要らないだろうし…そういう意味ではないだろう)

『わたし、将来この家に住みたいんですっ❗😀』

『へえっ❓』
(驚く佐川さんのドライバー)

『😀…💦』
(私だって驚いてますけど)

一瞬の沈黙は彼女が自ら破って

『だって、ここ、すっごーく、いいところだもの❗ねー』
(友達と顔を合わせながら)

『…ありがとう🙋そんな風に言ってくれて、思ってくれて、
本当に嬉しい❗
ありがとうね🙂』
(胸に手を当てて感動を表現する私)

『お茶を教えているんですか…?』
(門の中、家の方に興味を示しながら)

『そうよ。お茶を差し上げたいけれど、学校の帰りだとお誘いできないから、今度、庭を見に来てね。おうちの人に聞いてからね🙂』

『はい!ありがとうございまーす』

『あの…では、金曜日に』
(しばらく見守っていた佐川さんが、口を開いた)

『あ、じゃあ、さようならー‼️』
(察したのか、ぺこりと二人揃ってお辞儀をして去った女の子たち…)

金色の秋風が吹き渡り
がらんと開いた門の向こう

人はなくただ
飛脚が走る…トラックのみ

佐川さんと顔を見合わせ微笑む

星霜軒に後継者ができた記念日か?
内弟子志望か?
不動産お買い上げなのか?
国勢調査の時期だけど…まさか

この謎が解けるのはいつだろう

生きているのは実に面白い

思うようにならないから
思うのは自由なのかも知れない

佐川さんと交わす別れの挨拶に
また金色の風がすり抜けていった

栗平は実りの秋を迎えている

(松浦ひかり facebookから)
# by soukou-suzuki | 2020-09-22 17:01 | Hikari NOW!

腹式呼吸

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リモート稽古が始まってからかれこれ半年経ちました

お客様役となってお稽古に付き合うご家族とも半年…

秘して閉ざしていた『稽古の時間』がそれぞれの家庭に公開されてから
季節が巡って実りの秋となりました

対面稽古では落ち着いていた方も
お子さんが座に入ることで初めは
お点前の空気が揺らいだり
あるときは乱れたりしました

子どもは動き回るもの…
分子が跳ねているから仕方ない
フライパンの豆のように
座っていても気配はひたすら
ぴょんぴょん跳ね続ける

どうしたら画面の外側にいるお子さんと呼吸を同じくできるだろう…
と悩んでいました

最近はお客様役もカメラの中に写ってもらい、お点前がスムースな間は客役のお子さんにぼそぼそと語りかけるようにしています

『お客様の呼吸が、お点前の良し悪しを変えるので、腹式呼吸が大事なんですよ』

『鼻で吸って、止めてから、口から細く長く息を吐いてみてください』

『そうそう、あ、息が見える
もっともっと細くですよ…』

なんて語りかける私と、それを聞きながら微笑んで濃茶を練るお母さん

『腹式呼吸が上手な人は、なんでも上手なんですよ
スポーツも上達する
算数や絵を描くのも上手
お話もうまいし
お点前も上手になる…』

(ああ、もう催眠術に近い?)

真っ直ぐ見ながら
耳だけこちらに向けて小さく
頷いている

最近は息子さんの背筋も伸びて
貴人席に座る姿が美しい

まあるいおでこと
静かな眼差しが神々しい

見惚れているうちに茶が出され
茶碗を持つ姿も変わったなあ
と数ヵ月前を思い出す…

長い問答も元気にこなし
画面越しにもはっきり聞こえる見事な吸いきり
(ここはお母様と自主練を重ねているのがわかる)

拝見まで付き合い
長い長い問答も復唱して
フローリングに正座で通して
親子二人三脚で見事に完走✨

『お稽古ありがとうございました』

ご挨拶は、三人ですっきり呼吸が合いました!
ああ、何ヵ月か前の私の夢が叶った瞬間です

『ところで、お茶会では濃茶席のお点前もお願いするかも』
と余談になり

『え…、、急にドキドキしてしまって…、私、で、大丈夫でしょうか!?』

と心配そうなお母様に、
息子くん、はっきり一言!

『お母さん、腹式呼吸だよ!』

と。(笑)

ふむふむ、素質🐜🐜。

もう半年後のリモート稽古では
私の『子機』になってくれそう?☺️

オンラインのリモート稽古の佳いところがたくさん見えてきました

伝え方は様々でいい
伝わることも様々はありますが…
伝えたいことは変わらずぶれず

暮らしは仕事

日常茶飯事を美しく
心豊かに暮らして欲しい

庭では西王母の一番花が咲きました

時間は静かに、しかし
しっかりと流れています

(松浦ひかり facebookから)
# by soukou-suzuki | 2020-09-22 16:59 | Hikari NOW!

備忘録

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夏休みは既に昔のことのよう…
忘れたくないエピソードを書き留める

小学5年生のお弟子さん
夏休みの宿題で
『将来なりたいもの』を三つ書くようにという課題で…

『お茶の先生は書いたけれど、あと二つは書くことがない!』

ときっぱり悩んでいると
お母様から漏れ聞いた日

すー…  っと
全身に涼風が吹き抜けました🙂

あと二つを、余白にしておいてよしとする教育であって欲しい

未来もスケジュールも
過密すぎる現代

一種の花を投げ入れたような彼女の未来
日本の美意識の源や
未来への光を重ねてしまう

それでも書かないと渡れない世間なら
数寄者か、茶の湯者か、茶人で出すか…
文人、禅者、仙人、詩人…

なんでもよいわ

将来、庵を持とうとしている大阪へはもちろん
廬山でも崑崙山でも(笑)
訪ねて行こうと思っている

時が満ちて
彼女の庵に松風が聞こえるころ
今夏を思い出すのがわたしの夢✨

(松浦ひかり facebookから)
# by soukou-suzuki | 2020-09-22 16:56 | Hikari NOW!

星霜軒からのお知らせ

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~月釜および稽古の休止について~

平素は星霜軒へのご支援ありがとうございます

去る令和2年2月2日には
数寄屋門披露の茶会にご来駕いただきありがとうございました

皆様のご厚意に報いるため、感謝を込めた茶会を様々に計画しておりましたが、この度、世界中で猛威を奮っている新型コロナウィルスの感染が、いよいよ日本国内でも深刻化いたしました

星霜軒では2月より、感染予防および感染拡大を防ぐため、空気清浄や換気、器物消毒、時差による人数調整…などに努めておりますが、お客様の安全を第一に考え、2月下旬より、月釜茶会や茶事を休止しております

また、特に3月下旬からの、関東一円の重大局面における外出自粛要請期間については、一時的に稽古も休止(延期)をしております
(入門希望者の稽古場見学も当面お断りいたします)

星霜軒自体、全く門を閉ざしている訳ではございません

必要性に応じての面会、物品や書類の受け渡しを含む対面も、少なからず含めた生活しておりますが、この世界的な課題に対し、ひとりの人間としてできる最大限の協力をしたく、感染拡大防止を最優先にしております旨、何卒、ご理解とご協力をお願いいたします

ご用件のある方、またお問い合わせに関しては、フルネームと連絡先を添えて、メール、電話、ショートメール、SNSを通じていつでも可能です

どうぞコミュニケーション自体をご遠慮いただくことがないよう、よろしくお願いいたします

暮らしは仕事

毎日唱えて来た言葉が、世界的に共通課題になったように感じています

大切な皆様と、ご家族の健康、そして心穏やかな暮らしをお祈りしております

090-1540-6771 宗光
090-4135-3623 宗浩


※再開等の
最新情報は星霜軒サイト seisou-ken.com
をご覧ください

# by soukou-suzuki | 2020-04-01 21:21 | Hikari NOW!